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児童ポルノ禁止法改正案について現行法と比較、確認してみた

5月29日、児童ポルノ禁止法改正案が衆院に提出されたようです。

とりあえず、改正案と比較して現行法ではどうなっているのか今一度確認をしてみたいと思い書きました。

「児童」とは?「児童ポルノ」とは?

現行法では次のように定義されています。

この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。

この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一  児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二  他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三  衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

つまり、18歳未満の者のエロいものはダメ、ということになります。

何が改正されるのか。

今回の改正案では何がかわるのかと言うと、改正案の概要によれば、

  • 適用上の注意規定の明確化
  • 児童ポルノの「所持」等の禁止等
  • 自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持等についての罰則の新設
  • インターネットの利用に係る事業者の努力規定の新設
  • 被害児童の保護のための措置を講ずる主体及び責任の明確化
  • その他

が挙げられています。淡々と記述するのでおもしろくはないと思いますが順に確認してみます。

適用上の注意規定の明確化

改正案では、

法律の適用に当たり「児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」ことを明示

とあり、現行法では、

この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。

とあります。
改正案では「国民の権利」の部分をより詳しくしようということがわかります。

児童ポルノの「所持」等の禁止等

ニュース等では、ここの部分が大きくかわるひとつだと伝えています。
改正案では、

何人も、みだりに、児童ポルノを所持し、又は保管してはならない。(罰則なし)

とあります。現行法ではどうかというと、

児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3  前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6  第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

とあります。長いので整理しますと、児童ポルノを提供する目的で「製造」「所持」(データによる「保管」)「運搬」「輸入」「輸出」したらダメ、また「不特定多数に提供」「公然と陳列」してもダメ、ということ。

改正案と現行法との違いは「何人も、みだりに」という部分。つまり、提供する目的だろうがなんだろうが、持っていたらダメというところです。ただ、罰則規定はないようです。ちなみに、NHKの報道によると、改正案提出者のひとり、自民党政務調査会西川京子副会長は、

罰則は無いものの、単純に所持すること自体を禁止したのは啓もうの意味がある。

と述べたそうです。

自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持等についての罰則の新設

改正案では、

自己の性的好奇心を満たす目的で、
①児童ポルノを所持した者
②児童ポルノに係る電磁的記録を保管した者
→ 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

とあり、「単純に所持すること」と「自己の性的好奇心を満たす目的での所持」を区別し、後者に対して罰則規定を設けています。要は、これまでは提供する側の話のみだったのですが、改正案では提供される側も罰則を受けることになるということだと思います。

現行法の罰則規定については、「所持」等の禁止のところで、すでに引用をしているのですが、もう一度整理しながら書きますと、

  • 児童ポルノを提供する目的で「製造」「所持」(データによる「保管」)「運搬」「輸入」「輸出」

→三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金

  • 児童ポルノを「不特定多数に提供」「公然と陳列」

→五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

となっています。

インターネットの利用に係る事業者の努力規定の新設

改正案では、

インターネットの利用に係る事業者は、捜査機関への協力、管理権限に基づく情報送信防止措置その他インターネットを利用した児童ポルノの所持、提供等の行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとする。

とあります。現行法には、

国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。

とあり、「国、地方公共団体」だけでなく「インターネット利用に係わる事業者」も加えています。

被害児童の保護のための措置を講ずる主体及び責任の明確化

改正案では、

被害児童の保護措置につき、厚生労働省法務省、都道府県警察、児童相談所及び福祉事務所の例示により、主体及び責任を明確化

とあります。現行法では、

関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2  関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。

とあり、「関係行政機関」から、例えば「厚生労働省法務省、都道府県警察、児童相談所及び福祉事務所」を主体として責任を負うということをはっきりさせています。

その他

最後に「その他」ですが、これも単純所持と同じくニュース等で大きくかわる部分として取り上げられています。

(1)施行期日
公布の日から起算して20日を経過した日
※自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持等についての罰則は、本法施行日から1年間は適用しない。
(2)検討規定
①児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、擬似児童ポルノ等) と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究
②インターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧の制限(いわゆる「ブロッキング」の措置)に
関する技術の開発の促進
→施行後3年を目途として、①、②等を勘案しつつ検討、その結果に基づく必要な措置

特に、(2)では「児童ポルノ」に類する漫画等という位置付けを行い、今後検討することをはっきり明らかにしています。

改正案を提出する理由

ここでは確認の最後に、改正案を提出する理由について引用して終わっておきたいと思います。

児童ポルノに係る行為の実情、児童の権利の擁護に関する国際的動向等に鑑み、児童ポルノをみだりに所持すること等を一般的に禁止するとともに、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する罰則を設け、あわせて、インターネットの利用に係る事業者について児童ポルノの所持、提供等の行為の防止措置に関する規定を整備する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。